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仁左衛門代々 [芸談]

京阪創業70周年を記念して発行された「ミニ・ヒストリー 京阪電車・車両70年」
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を入手。
しかしこの本、実は2年前に実家を処分した時に本棚から発見したものの、判型が大きすぎて持ち帰りを断念しており、今回が2冊目。ああ、あの時持って帰っていれば...。
それはさておき、表紙をめくると冒頭に、当時の社長 青木精太郎氏のご挨拶に続いて、十三代目片岡仁左衛門丈
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のお祝いのことばが掲載されています。
ご存知の方も多いと思いますが、十三代目は鉄道ファンとしても夙にご高名で、鉄道友の会の理事、そして名誉会長を歴任され、鉄道雑誌に寄稿をされたり、たとえば1969(昭和44)年に阪急東口電停
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で行われた大阪市電全廃のセレモニーでは、最終便の市電運転手に花束を贈呈されるなど、様々な鉄道関係のイベントにもご出席されています。
以前
https://ho-blog.blog.ss-blog.jp/2019-10-05
書きましたように、十三代目の養父が十一代目、十三代目の三男で当代の仁左衛門丈が十五代目。不思議なことに偶数代が空いています。
しかし、偶数代の仁左衛門が全く不在だった訳ではなく、偶数代の悲劇といわれる経緯があったことが知られています。
ことの発端は、江戸末期に名優と謳われた八代目の三男の九代目襲名。九代目が襲名披露興行での口上役を依頼したのが親戚筋だった初代 市川右團次。ところが彼が、芝居小屋同士のいざこざに巻き込まれて襲名興行に出られなくなり、それを苦にした九代目は直後に悶死してしまいます。
跡を継いだのが弟の十一代目ですが、襲名に際して、八代目の養子で、若くして亡くなった二代目片岡我童に改めて九代目仁左衛門を追贈し、兄九代目を十代目とします。
十一代目の没後、跡を継いだのは、八代目の娘の子で十代目の養子だった十二代目。この十二代目は名優 十五代目市村羽左衛門の相方を務め、東京歌舞伎で活躍しますが、第二次世界大戦後の混乱期に、年若い後添えとその子、そしてお手伝いさん2人とともに、住み込みの門人によって殺害されてしまいます。
十二代目の先妻が残した3人の子は、既に成人して家を出ていたため難を逃れますが、人気商売ゆえ、仁左衛門の名跡は彼らではなく、十一代目の養子であった十三代目が継ぐことになります。
十二代目の長男は、我こそが「十三代目仁左衛門」たるべきとの自負から、本来は「五代目我童」であるべきところをあえて「十三代目我童」と名乗りながら、それでも十三代目仁左衛門とともに、衰退しつつあった上方歌舞伎を支え、死後、十五代目の襲名の際に、十四代目仁左衛門を追贈されています。
この、名跡の追贈という行為には、鎮魂の意味が含まれています。追贈される本人の無念を鎮めるという意味ももちろん含まれていますが、それだけでなく、彼の家族や彼を支えたお弟子さんたちなど、残された人たちの悲しみを鎮めるという意味も含まれていると私は思っています。
仁左衛門代々の系図はこちらを。
http://www.kabuki.ne.jp/meikandb/files/pedigrees/5c34395fea8f6_20190108144711.gif

歌舞伎 家と血と藝 (講談社現代新書)

歌舞伎 家と血と藝 (講談社現代新書)

  • 作者: 中川 右介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/02/02
  • メディア: 新書



nice!(94)  コメント(7) 

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コメント 7

のり

この本は私も持っています。なかなか素敵な本ですね。
十三代片岡仁左衛門様は、筋金入りの鉄道ファンとしてよく知られていますね。たしか40年前の南海平野線廃止当日に、乗務員さんへの花束セレモニーに来ておられたと記憶しています。

鉄道ファンといえば「杵屋栄二」様という凄いお方がおられましたね。プレスアイゼンバーンから発行された「汽車・電車」という写真集は永遠の名作だと思います。
by のり (2020-02-04 07:09) 

hideta-o

のりさんさま
ご訪問ありがとうございます。十三代目は、晩年まで嵯峨野に住まわれていて、関西の鉄道イベントにはよく顔を出されていたようですね。そもそも嵯峨野に住まわれたのは、近くを山陰線の蒸気機関車が走ってるから、とご家族には思われていたらしいことを、鉄道ピクトリアルに寄稿されています。ご本心は判りません。
それから、プレスアイゼンバーンの本ですが、高くて、しかも多くは判型が大きいので、今の自宅には置いておくことが難しいですねー。
by hideta-o (2020-02-04 08:49) 

サットン

私も持ってます! 確かに超大判で本棚からはみ出していました。処分はしてないので家のどこかに眠っているはずなんですが・・・。
先代仁左衛門は当時冷遇されていた我々鉄道ファンには頼もしい存在でした。今のように各界に鉄道ファンがたくさんいた時代じゃなかったですから。いても大きな声で鉄道ファンですと宣言できなかった空気感があったのかも知れません。
by サットン (2020-02-05 11:17) 

hideta-o

サットンさま
ご訪問ありがとうございます。
おっしゃるとおり最近の鉄道ファンは恵まれてますね。昨日も、ゴールデンタイムのバラエティ番組で廃線跡探訪をしており、私もしっかり見ました。
by hideta-o (2020-02-06 08:34) 

hideta-o

nice!をいただいた皆様、ありがとうございます。
by hideta-o (2020-02-06 13:15) 

schnitzer

お久しぶりです。
私も”ああ、あの時持って帰っていれば...”ということがよくあります。
私が大切にしていることを知っているはずなのに。
と言うと”それなら持っていけ”と言われてしまいますけど。
by schnitzer (2020-02-06 16:14) 

hideta-o

schnitzerさま
ご訪問ありがとうございます。2年前に実家を処分した時は、何を持って帰って何をあきらめるか、随分と悩みました。今考えると、やっぱりあれは持って帰っておけば・・・という後悔が殆どですね^-^;
by hideta-o (2020-02-07 08:34) 

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