1945年8月14日 [いまさら読書]
この日、米軍は、大阪城の東側に拡がっていた大阪陸軍造兵廠(旧称:大阪砲兵工廠)に大空襲を加えます。ポツダム宣言受諾を躊躇していた日本政府に圧力をかけるためとも、戦後をにらんで、日本の兵器製造能力を叩き潰しておくためとも言われていますが、この空襲によって造兵廠は一面、瓦礫の山と化し、働いていた多くの工員が犠牲になりました。
また、被害は造兵廠の周囲にまで及び、特に国鉄京橋駅の城東線ガード下に空襲を避けていた多数の一般市民も、ガードを突き破って落下した爆弾によって命を奪われています。
今、造兵廠の跡地はJRの森之宮車庫、大阪地下鉄の森之宮工場、大阪城公園、そして冒頭写真の大阪ビジネスパークになっていますが、この大阪ビジネスパークと寝屋川をはさんだ対岸の京橋駅南口
の近くのガードの横には慰霊碑
が設けられており、駅前の広場には平和祈念像
も建っています。323系の件で環状線に乗って京橋に来たついでに、お参りしてきました。
戦後、壊滅した造兵廠の跡地は、国家財産ということで国の管理下に置かれますが、基本的には放置されて、事実上、戦争の悲惨さを伝えるための大きすぎるモニュメントとして、長い間、野ざらしにされていました。
しかしここに、この瓦礫の山が実は宝の山であることを発見した一団の人々が現れます。彼らは、立入禁止とされていた管理地に夜陰に乗じて侵入して、その恐るべき腕力でもって、ほぼ人力で、瓦礫の中に埋もれていた金属類を掘り出しては運び出し、屑鉄業者に売り飛ばして生計を立てるようになります。
当然、当局側はその検挙、摘発に乗り出しますが、広大な造兵廠の跡地に神出鬼没する彼らを徹底的に取り締まることはできず、いたちごっこが繰り返され、その様子をニュース映像などで見ていた一般市民は、やがて彼らを、当時始まったばかりのテレヴィジョンで放映されていたアメリカ発の西部劇の敵役になぞらえて「アパッチ族」と呼ぶようになります。
そして、この「アパッチ族」を主人公にした小説が、大阪出身の3人の作家によって創作されます。
開高健「日本三文オペラ」
小松左京「日本アパッチ族」
梁石日「夜を賭けて」
2016-10-07 21:10
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コメント(10)
大阪城でも兵器を製造していたんですね。
慰霊碑や忠魂碑は小さな農村のお墓でも見ることができて、
戦争が私たちの生活にいかに影響を与えたかを痛感します。
よく見ると、日露戦争時代からあるようで、ついついじっくりと見てしまうのです。
by ワンモア (2016-10-07 23:49)
高校から大学生の頃までは、森ノ宮〜京橋間の環状線の内側にかなり広い雑草や低木に覆われた空き地があって、その中にレンガ積みの廃墟やコンクリートのトーチカみたいなのがそこここに見えてたのを思い出しました。
余り記憶にないのは、反対側の森ノ宮電車区を眺めることが多かったからかな〜?(^ ^)
by まぢにゃん (2016-10-08 10:27)
ワンモアさま
大阪造兵廠は東アジア最大の兵器工場で、そのため米軍の標的とされたようです。
by hideta-o (2016-10-08 13:46)
まぢにゃんさま
ありましたね煉瓦積みの廃墟。大阪城公園を整備するとき、あれをモニュメントとして残してもよかったのでは、と考えています。
by hideta-o (2016-10-08 13:51)
hanamuraさま
nice!ありがとうございます。
by hideta-o (2016-10-08 22:13)
この廃墟は、大島渚の「青春残酷物語」でもロケ地になってました。
by Cedar (2016-10-10 09:49)
Cedarさま
nice!とご訪問ありがとうございます。大島映画、ヌーベルバーグですね。
by hideta-o (2016-10-10 21:39)
ネオ・アッキーさま
Schnitzerさま
nice!ありがとうございます。
by hideta-o (2016-10-10 21:44)
turugiさま
MINERVAさま
nice!ありがとうございます。
by hideta-o (2016-10-22 14:29)
マルコメさま
nice!ありがとうございます。
by hideta-o (2016-10-31 20:39)