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プルマンカー(その2) [BR極東局]

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 第二次世界大戦後、ダイキャスト成形、続いてプラスチックの射出成形の技術が導入されたことにより、欧米の鉄道模型は飛躍的に発展します。それまでは1両ずつ手作りするしかなかった車両の大量生産と、それにともなう低価格化が可能となり、鉄道模型は、お金持ちの道楽から庶民でも楽しめる趣味になったのです。
 ところがダイキャスト成形や射出成型の金型を製作するには結構なお金がかかります。特にプラスチックの射出成型用の金型は精密であり、非常に高価です。
 そのため投資を回収して利益を出すには、1つの金型を使用してできるだけ数多く成形をする必要がありますが、雑貨と違って鉄道模型は、いくら市場が拡がったとはいえ売れる数が限られています。
 そこで考え出されたのがバージョン違い。つまり同じ車両の、鉄道会社や時代による塗装の違いをたくさん出すことです。
 この点で、欧米の鉄道模型は恵まれていたといえます。なぜならこれらの国々では、実物でも同じことが行われていたためです。
 例えばアメリカでは、USRA、AARといった公的機関の制定した統一規格に沿って設計された車輛や、あるいはEMD、プルマン、ブリルといったメーカー主導のレディメイド、イージーオーダーの車輛が、様々な鉄道会社で使用されてきました。
 またヨーロッパでは、特に強国であったドイツ、フランスなどの車輛が二度の大戦の混乱によってヨーロッパ中にばらまかれた上、第二次大戦後には、UIC規格に則って造られた車輛が各国で採用されたりしています。
 そのため、欧米の鉄道模型メーカーはこぞってバージョン違いを出していますが、中でも積極的だったのがイタリアのLima社でした。
 Lima社のバリエーション展開は無節操ともいえるもので、スケール的にあり得ない製品まで出していました。例えば同じモールドの製品を、欧州大陸型だけでなく英国型、さらには米国型にも流用していたのです。Lima社のバリエーション展開についてこちら。
http://lima-n-scale-complete-catalogue.webnode.cz/
 もうお気づきと思いますが、今回のブリティッシュプルマンはLimaお得意のバージョン違いの一つで、オリジナルはワゴンリのコートダジュールプルマンです。
 車体の大きい欧州大陸型のプルマンカーを1/160で模型化すると、車体の小さい英国型の1/148とほぼ同じサイズになります。
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 ただし縮尺の違いだけでは、今回の奇跡(?)は起こりませんでした。もう一つの要素がショーティーです。
 HOゲージやNゲージの黎明期には、急曲線に対応するため車体長のみ短くするショーティーが一般的でした。例えばHOゲージでは車体幅、車体高は1/87で車体長のみ1/100のショーティー品が先行して発売され、その後、クローズカプラーなどの技術の進歩とともに車体長も1/87のスケール品が普及して今日に至っています。
 Limaのプルマンも、Nゲージながら実はショーティーです。冒頭写真および下の写真で一緒に並べているのは同じコートダジュールプルマンで、車体長も1/160のスケール品(KATO製)です。
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 これに対しLimaはショーティーで、車体長は約1/180です。このショーティー化の結果、車体長が1/148の英国型とほぼ一致することになったのです。ではなぜLima社が車体長を1/180としたのか、は不明ですが、オリジナルのプロポーションを維持するのにちょうど良いサイズだったのかも知れません。いずれにしろ偶然の積み重ねの結果として、ほぼスケールのブリティッシュプルマンカーが誕生したと言えます。

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