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坂の上の…(その32) [艦]

 江藤淳「海は甦える」 第二部を読んだ。

 第二部は日清戦争後の下関講和会議から、日露戦争後のポーツマス講和会議終了後、帰国した全権大使小村寿太郎を海軍大臣山本権兵衛と首相桂太郎が新橋駅に出迎えるまでを描いている。
 特に下関講和会議における外務大臣陸奥宗光の活動には多くの頁が割かれている。また日露戦争では、旅順口奇襲、仁川沖海戦から蔚山沖海戦までの海戦の様子が描かれているが、これらの章には、この物語の本来の主人公であるはずの山本権兵衛は殆ど出てこない。
 前者は外交官の仕事であるから仕方がない。また、実際の海戦の段階になると軍政家としての山本の仕事は既に終わっているのでこれも仕方がないにしても、やはり何となく物足りない気がする。
 また肝心の日本海海戦については具体的な記述がない。遣米特使の金子堅太郎が、日本が勝利したという電文を受け取る描写のみである。ポーツマス講和会議も省略されている。物語を急いで終わらせようとしている感じがする。
 そして巻末には、年老いた山本権兵衛が、関東大震災の起こるまさにその日に第二次内閣を組閣する様子が、エピローグとして描かれている。
 本来、物語はこの第二部までで終わりだったのかも知れない。エピローグのあとの作者のあとがきにもそのような雰囲気がにじみ出ている。
 そのため、第三部以降を読むべきかどうか今悩み中である。
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