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ED57-輸入電機最後にして最大の謎 [機関区]

ED57.jpg
 これまで紹介してきた国鉄の輸入電気機関車は、いずれも、誰が何のために導入したかが明らかでした。
 すなわちED10~ED14、ED53、ED54、EF51の各型式は、国鉄が自らの意志で、電気機関車の比較検討および電化初期の使用のために導入したものですし、ED50~ED52、EF50は、日英同盟失効後の英国の歓心を引き付けておくために、日本政府が、国鉄の計画とは関係なしに無理やり導入したものでした。
 さらにED56は、前回ご紹介しましたように、三菱電機がウェスティングハウスとの交渉のための手札として輸入して、のちに国鉄に引き取ってもらったという経緯が判明しています。
 しかし今回ご紹介しますED57は、誰が何のために輸入したのかが全く判らないのです。手元の複数の資料にあたってみても、そのことについて明確に説明しているものはありませんでした。
 のみならず、さらに調べてゆきますと当時、車両の輸入、設計、製造を掌っていた国鉄車両課でも、ED57については把握していなかったことが明らかになってきました。
 時の車両課長で、のちに技師長を務められた朝倉希一博士が鉄道ピクトリアル No189 1966/10に寄稿された「国鉄用鉄道車両の協同設計」の「2.電気機関車の協同設計」には、下記のように記載されています。長いですが引用します。
「次に電気機関車の協同設計をしたのは、私が車両課長の時であり、それから協同設計が国鉄のプラスとなった。
 電気機関車の注文については、事務当局に不明朗のことがあった。
 先きに東京-国府津間の電化に必要な機関車全部をEE会社へ注文して、内外製造社を驚かした。
 国鉄100年史の編集に当り、図らずもこれが外交関係によることが知れたが、当時、事務当局は知らなかった。
 この注文に刺激されて、日立製作所は自ら生産の能力あることを証するため、日立の危険において、電気機関車の新製を始めた。
 技術上良い経験をえたが、国鉄と何らの了解がないので、後に至り買上げすることに多くの困難があった。
 ジーメンス社はベルリン工場において、国鉄用電気機関車を製作していることが知れてきたが、われわれ当事者の知らないものである。
 さらに三菱はメトロポリタン・ビッカースの電気機関車技術導入のため、大形機関車を注文し、その関係で技師を派遣することが知れてきた。
 私は国産を考えなければならないと思っているとき、このような状勢となったので、断然、協同設計により設計を進めるべきだと決心した。」
 この文章は下記のページで確認することができます。
http://ktymtskz.my.coocan.jp/asakura/e5.htm
 太字の箇所がED57に関する記載です。
 以上のことから、ED57については、EE製電機の場合と同様に、何らかの政治的な動きがあったことも想像されます。
 しかし当時のドイツでは、第一次世界大戦後のベルサイユ会議で課せられた膨大な戦時賠償金によるハイパーインフレがようやく沈静化しつつあったものの、いまだ混乱が続いている状況で、極東の小国、それも第一次大戦の敵国であった日本にたった2両の機関車を売り込むことが何かの助けになったとは思われません。
 誰が、何のために、ED57の輸入を決定し、実行したのでしょうか。輸入電機の最後にして最大の謎がここにあります。
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コメント 4

hanamura

輸入電機!!! 私は、大井川鐡道「しんかなや」で、ED10形による客車の編成作業を見て来ました。古いコメ国製品も素晴らしいです。 謎の方は、ネットに資料は無さそうです。国立国会図書館、公文書館には必ず残っているのでしょう! 平成の某・学園問題と違って、戦前の記録はシッカリしていると信じます!
by hanamura (2018-07-07 17:56) 

hideta-o

@ミックさま
鉄腕原子さま
ネオ・アッキーさま
nice!ありがとうございます。

by hideta-o (2018-07-08 10:21) 

hideta-o

hanamuraさま
公文書については、お役人さまの自覚に期待せざるを得ないですね。

 それから大井川ですが、残念ながら米国製の鉄道省ED10とはよく似た名前の別人で、戦後、昭和24年に三菱電機で製造された機関車です。ほかに小田急、近鉄、それに神戸電鉄に仲間がいました。
 もっとも、鉄道による貨物輸送がなくなった今、国産といえど、電気機関車が貴重な存在であることには違いありませんね。

by hideta-o (2018-07-08 10:36) 

hideta-o

Cedarさま
nice!ありがとうございます。
by hideta-o (2018-07-12 22:12) 

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