ED55の謎-何度計画されたのか? [機関区]
(EC0418、ED55)
輸入電気機関車は、ED54の次がスイス+イギリス合作のED56で、間のED55はなぜか欠番になっています。この点について、ウィキの「国鉄ED55形電機関車」の項では、1926年と1941年に、それぞれED55を造る計画があったものの、いずれも実現しなかったとされています。
このうち1941年の計画は、EE製の電機を置き換えるために、ED16のギヤ比を変更して旅客用とするというものだったようですが、1926年の計画では、「形態はゼネラル・エレクトリック製のED14形に類似した車体と、デッカー製私鉄向電気機関車のようなデッキと一体化した板台枠台車を組み合わせたような構造で、軸配置1B+B1の68t機」を新製する予定があったようで、詳細が気になります。
そこで、ウィキに参考文献として提示されていた鉄道ピクトリアル1960年5月号 No.106
を入手。「ED55のなぞ」の頁を確認しましたが、ここにも該当する図面はなく、「電気機関車展望」の著者で、当時国鉄の車両設計事務所において151系などの設計をされていた日高冬比古氏が、
(1) 同誌1960年1月号 No.102の投稿欄にED55の図面として掲載された、図面番号EC0383の図面には「ED55」とは書かれていないこと、
そしてこの投稿を受けて、氏が車両設計事務所の図面庫を探索された結果、
(2) 1929年に作図されたED55の図面(図面番号EC0418)を発見されたこと、またそれとは別に、
(3) 1941年にED16のギヤ比を変更するために設計されたギヤボックスの図面(図面番号EC2003)を発見されたこと
が記載されていました。
また、日高氏が鉄道ファン1965年5月号7月号に寄稿された「戦前戦中の国産電気機関車(日高冬比古の電気機関車発達史9)」の「ED16」の項にも、1929年に、EF52の派生形として、中央線用の「ED16」(図面番号EC0419)と東海道線用の「ED55」(図面番号EC0418)が計画されたことと、両者の図面が掲載されています。
http://ktymtskz.my.coocan.jp/yuge/hidaka9.htm
図面を比較しますと、1929年に計画されたED55は、ED16と足回りは同じで、車体もよく似ていますが、搭載する機器類が違うため車体長が僅かに異なる他、側面エアフィルタの数も違っており、ED16とは別設計であったことが明らかです。また、このことから、当時の国鉄が、同じ部品を使いながら用途に合わせて設計を変更するという、WH社がED53とEF51で採用した手法を、しっかりと学び取っていたことが判ります。
(EC0419、ED16)
そして、これらの記事から判断する限り、ウィキの記載は誤りといえます。1929年に、EF52の派生形として、ED16とよく似たED55が計画されるも実現せず、次いで1941年に、今度はED16を改造してED55とすることが計画されるも、やはり実現に至らなかった、とするのが正しいと考えます。
ただ、ED55の計画は、この2回だけではなかったと私は考えています。(この項続く)
2017-03-19 22:06
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コメント(4)
Wikipediaは気をつけないと誤記がありますよね(;^ω^)
でも、そこに気づくとは流石ですな。勉強になります。
by ワンモア (2017-03-21 11:26)
iruchanさま
横 濱男さま
nice!ありがとうございます。
by hideta-o (2017-03-25 11:07)
ワンモアさま
ウィキの記事は、執筆者の解釈の違いや、複数の執筆者が編集合戦をした結果、間違った方向に向かうといったことがよくある様ですが、この記事は、1929年の計画を飛ばしてしまっているのが間違いですね。
by hideta-o (2017-03-25 11:14)
hanamuraさま
Cedarさま
Schnitzerさま
nice!ありがとうございます。
by hideta-o (2017-04-15 17:03)