SSブログ

箕有野江線 [夢のあと]

hankyo22.JPG
 1917(大正6)年発行の「歌劇十曲」には、先に引用しました岩下清周の私鉄統一案に関する「・・・まぼろしの消えゆく様に消えました。」に続いて、「野江線は既に大阪市の経営に移りました。」とあります。これはどういうことでしょうか。たしかWikiの「京阪梅田線」の項によれば、箕有の野江延長線の特許は大阪市の妨害によって失効させられたことになっていたはずですが・・・。
 そこで小林の著作をさらにあたると、彼が1935(昭和10)年に出版した「私の行き方」という本に行き当たりました。
 国会図書館デジタルコレクションの該当書籍のページです。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1886364
 少し長いですが、以下に引用します。なお仮名遣いは現代仮名遣い、漢字は当用漢字に改めています。またカッコ内は私が挿入した注記です。
「そのかわりには、また痛い失敗もある。その実例を一つあげて見ると、阪急ではもと梅田から野江町に出て京阪と連絡する認可線を持っていたが、これもやはり無理はしない方針から権利を放棄するつもりで、それにはせめて、それまでに持出した金だけは回収したいと考えて京阪の太田君(太田光凞、1917年当時、常務取締役)に「引き受けて呉れないか」と頼んだが、太田君はウンとは言わぬ。その権利といっても、当時で一万六千円から二万円そこそこだった。京阪でもやらぬ。私の方でもやらぬ。そこで結局それは市の方で引き取って呉れたが、若しその時阪神の場合(灘循環線のこと)と同じように市の方でも断ってくれたら今日全くえらい話だったろうのに、市の方に先見の明のある人がいたから、引き受けてくれたのだ。こんな失敗も言わば(小林自身の)小胆からのことだ。」
 この記載から、野江延長線の特許は失効などしておらず、大阪市に譲渡されたことが明らかです。それも箕有で持て余して京阪も買い取らなかったので、小林の方から大阪市に頼んで引き取ってもらったといった書き方です。
 では大阪市は譲受した特許をどうしたかといいますと、ちゃんと大阪市電の路線の一つとして開通させています。
 大阪駅前から冒頭写真の道路(都島通)を通り、天六を経由して都島車庫に至る梅田善源寺町線(市電第四期線)です。この区間は大阪市電最後の路線の一部としても知られており、写真左の「阪急メンズ大阪」(昔のナビオ阪急)前の路上にあった阪急東口電停において、1969(昭和44)年に、同線廃止ならびに市電全廃のセレモニーが行われています。

大阪市電が走った街 今昔 水の都の路面電車定点対比 (JTBキャンブックス, No. 19)

大阪市電が走った街 今昔 水の都の路面電車定点対比 (JTBキャンブックス, No. 19)

  • 作者: 辰巳 博
  • 出版社/メーカー: JTB
  • 発売日: 2000/11
  • メディア: 単行本



nice!(6)  コメント(7) 

nice! 6

コメント 7

ayu15

野江から梅田が実現してたら今頃どうなっていたでしょうね。
by ayu15 (2016-07-11 10:28) 

hideta-o

ワンモアさま
nice!ありがとうございます。
by hideta-o (2016-07-11 20:02) 

hideta-o

ayu15さま
 おそらく野江から天満橋までは支線になり、その後の淀屋橋延長や中之島線はなかったかもしれませんね。
by hideta-o (2016-07-11 20:20) 

Cedar

先日の阪神に続き興味深いです。
先日ある模型のコンペがあり、テーマは阪堺だったのですが、私がエントリーしたのは、関西の私鉄が大阪市電に乗り入れ、共通規格貨車の直通運転ネットワークがあった、という妄想に基づくボックスモーターでした。野江延長線にも貨物列車が走って欲しい。

by Cedar (2016-07-12 12:56) 

hideta-o

Cedarさま
 2051号:ずっと拝見させていただいております。京阪1550形みたいなレタリングはされないんでしょうか。"Nankai Railway"とか"Fareast Pacific"とか・・・。

by hideta-o (2016-07-12 20:46) 

hideta-o

Schnitzerさま
nice!ありがとうございます。
by hideta-o (2016-07-12 20:47) 

hideta-o

ネオ・アッキーさま
johncomebackさま
nice!ありがとうございます。
by hideta-o (2016-08-05 23:26) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

京都という街箕有野江線(その2) ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。