河陽鉄道

　明治の鉄道建設の機運は、前回紹介した都市部には限られず、全国各地で新線が建設されます。その一つに、初代大阪鉄道（→関西鉄道→国鉄関西線→JR大和路線）の柏原を起点とし、東高野街道に沿って南河内地方を縦断して、東西の高野街道が合流し高野山参詣の拠点であった河内長野を目指した河陽鉄道があります。
　しかし河陽鉄道の沿線はのどかな農村地帯で、これといった産業があった訳でもなかったため、会社は当初から経営難で、創設［明治29(1896)年］の2年後には新会社河南鉄道を設立して経営を譲渡するなど、路線の経営および延伸は困難を極め、明治35(1902)年に河内長野に到達したときには、既に南海高野線の前身である高野鉄道が、西高野街道に沿って大阪から河内長野まで開通したあとでした。しかも高野鉄道が大阪の道頓堀駅（今の汐見橋駅）に直結しているのに対し、河南鉄道は柏原で関西鉄道に乗り換えが必要で不便ある上、頼みの関西鉄道が明治40(1907)年に国有化されて全く孤立無援の状態に。
　普通ならここで国有化を願い出るなどするところですが、河南鉄道の経営陣は一発逆転を狙って大正8(1919)年に社名を大阪鉄道(二代目)と改め、大阪直通を目指して道明寺から分岐する高規格の電化新線の建設を開始し、大正12(1923)年に大阪天王寺（のちの阿部野橋）に達します。また昭和4(1929)年には、古市から分岐して久米寺（のちの橿原神宮前）まで路線を延長して吉野鉄道との直通を開始し、さらに宇治山田への延長も視野に入れるなど、会社は大発展を遂げます。ちょうど阪神電気鉄道［明治38(1905)年開業］、小林一三の箕面有馬電気軌道［明治43(1910)年開業］、京阪電気鉄道［明治43(1910)年開業］、そして岩下清周の大阪電気軌道（大軌）［大正3(1914)年開業］などが相次いで建設された電鉄建設ブームの時代にあたります。
　しかしその後は、岩下の跡を継いだ金森又一郎の大軌に次々と先を越され、最終的には大軌の後身である関西急行鉄道に吸収されて近鉄の一員を構成するに至ります。今の近鉄南大阪線系各線です。河陽鉄道の路線は、今は柏原ー道明寺間が道明寺線、道明寺ー古市間が南大阪線、古市ー河内長野間が長野線として運行されています。
　昨日、春らしい陽気に誘われて河陽鉄道の足跡を訪ねてきました。まずはJR大和路線で柏原へ。

　近鉄道明寺線のホームは、大和路線の大阪方面行きホームと共用になっています。

　トイレへ行ってからホームに降りると、ちょうど電車が出たところでした。

　PitapaやIcocaなどのICカードで近鉄を利用する場合は、ホーム上の簡易改札機にタッチします。

　道明寺線の柏原側の終端。

　近鉄の柏原駅の全景。左側の空き地は機廻し線の跡でしょうか。

　ホームは、電車用に2両分が嵩上げされていますが、その先は蒸気時代のホームが一段低いままで残されています。



　しばらく待っていると、先ほど道明寺方面へ向かった電車が折り返しで戻ってきました。

　道明寺線は全線単線で、しかもワンマン運転です。
　この電車に乗って道明寺に向かいます。

　途中の駅は、大和川右岸の堤防上にある柏原南口のみです。

　駅を出るとすぐ大和川の鉄橋を渡り、　

何となく心細い単線

をしばらく走るともう道明寺駅に到着です。左側の線路は南大阪線への連絡線。その左は保線基地、さらにその左は大和川の支流である石川の堤防です。


　道明寺線の道明寺側の終端。

　この項つづく

コメント 2

おお、道明寺線ですか。
まだ6600型（初代）が走ってる頃行きました。
懐かしいですね〜。
by まぢにゃん (2016-03-06 21:00) 

こんばんは〜
ご訪問とniceありがとうございます^^
今日、茨城県へ出張に行ってまして、
Ｃ12蒸気機関車に遭遇しました！
やっぱり本物は迫力が違いますね(^o^)
by ワンモア (2016-03-06 22:26)